「水野英子さんの講演と緑川まり&るみ 愛を歌う」のイベントが、10月7日(土)の午後に開かれました。
最初に、トキワ荘に居住した紅一点のマンガ家水野英子さんが自らの少女時代のことを語ってくれました。昭和30年当時、下関に住んでいた水野さんが送った原稿が手塚治虫さんの住む並木ハウスの天袋から見つかり、少女漫画雑誌の編集者だった丸山昭さんの目にとまりました。それから丸山さんに原稿を送り丁寧な指導を受けながら漫画デビューしたそうです。昭和33年には「銀の花びら」という長編連載を書き、18歳の時にトキワ荘に移り住みます。上京したときはセーラー服に小さなバッグとう格好だったそうです。
トキワ荘も当時は白い壁の明るい雰囲気のアパートで、赤塚不二夫さんのお母さんや石ノ森章太郎さんのお姉さんなど女性もいたそうです。そのお姉さんの突然の死。赤塚不二夫さんの美男子ぶり。そして石ノ森、赤塚さんと一緒に結成したU・マイアで異色の少女漫画を書いた話などなど。トキワ荘やその当時の若手漫画家達のエピソードが当事者である水野さんの口から語られ、多くの聴衆にとってはとても懐かしく、また、興味深い話ばかりでした。講演の後には貴重な漫画本の展示があり、自著のサイン会も開かれました。
水野さんはオペラがお好きだということから、後半はオペラ歌手である緑川まりさんの登場です。ピアノ伴奏はお姉さんのるみさん。体型は対照的ですがとても仲のよい姉妹による、歌の催しとなりました。
最初がヘンデルの歌劇の中で歌われる有名な「オンブラ・マイ・フ」。そして日本歌曲メドレーの前には聴衆に発声の練習。犬がはっはっは、猫がニャーン、化け猫ニャーンの三つで行う発声練習にみんな大きな声で参加しました。春が来た、さくら、七夕、我は海の子、村祭り、母さんの歌、お正月と、日本の四季のメドレーを参加者と一緒に歌いました。シャンソンの「サクランボの実る頃」をお姉さんのピアノで、るみさんが朗読する一幕も。
そしてハイライトは水野先生のお好きなワーグナーのオペラから、歌合戦の前にエリザートが歌う「殿堂のアリア」。最後は賛美歌「さやかに星はきらめき」(オー・ホーリー・ナイト)で締めくくられました。
まりさんは歌だけでなく、間に挟まれるお話が抱腹絶倒。ワーグナーのワルキューレの騎行や、時速240キロで5時間走り続けるようなワーグナーオペラの裏話。そして、自らが経験したご主人やご主人のお父様の介護の裏話などなど。会場は爆笑に次ぐ爆笑で盛り上がりました。
日本のマンガの歴史の中でも貴重なトキワ荘のエピソード、なかなか聞くチャンスのないオペラ歌手の生の歌声とお話に、会場に入りきれないほどの参加者の興奮は終わっても冷めやらず、ロビーで話の輪が広がっていました。